ドクターコラム

「肉離れ」の原因・症状・応急処置・治療方法について

肉離れは、捻挫や骨折と並んで耳慣れた「怪我(ケガ)」の一つではないでしょうか。診療でも「肉離れをした!」と患者さん自身で診断し受診されることも多く、中高校生から高齢者まで幅広く発症する怪我(ケガ)です。スポーツ活動中に下肢に起こることが多いですが、階段などでバランスを崩した際や重いものを動かそうとした時など、日常生活動作で発症することも少なくありません。

この記事では、肉離れの原因・症状から当院で行っている治療法について詳しく紹介するので、突発的な肉離れ・慢性的な肉離れに悩んでいる方はぜひ参考にしてください。

肉離れとは

肉離れは、典型的には筋肉が収縮した状態で引き伸ばされた時に生じ、自分の筋力によって筋線維や筋膜の一部が切れることで起こる怪我(ケガ)です。最近の研究から多くの肉離れが筋肉自体の断裂というよりは、筋肉から腱に移行する部分に損傷が起こることが分かっています。

原因

肉離れの原因は、筋肉のコンディションが影響していると考えられています。筋肉が硬いと、引っ張られた力に対して筋肉が縮もうとする力が強い状態にあるため、この時に自らの筋収縮力、あるいは筋肉が反対方向へ伸ばされることにより発症します。
しかし、肉離れの病態・原因についてはまだ不明な点が多く、そのため予防がとても難しい怪我(スポーツ外傷)とされています。そこで当院では、脳の働き(ブレイン コンディション)に着目しています。
脳の働きが悪くなると、脳と身体との連携システムが乱れ、つまり脳からの指令と身体反応にズレを生じることで、肉離れを起こすのではないかと推測しています。

好発部位

☑ハムストリングス(太ももの裏の筋肉)
☑下腿三頭筋(ふくらはぎの筋肉)
☑大腿四頭筋(太ももの前面の筋肉)
☑大腿内転筋(太ももの内側の筋肉)

症状

自覚症状

☑断裂音(ピキッ、バチンなど)の自覚
☑痛み
☑ストレッチ痛(伸ばしたときの痛み)
☑圧痛(押したときの痛み)
☑抵抗運動時痛(力を入れたときの痛み)

他覚症状

☑腫脹(腫れ)
☑内出血
☑断裂部の陥凹(へこみ)

重症度

筋肉をストレッチした時の痛みで重症度を診断し、軽症・中等症・重症の3段階に分けられます。

画像診断

肉離れの診断・症状の程度はレントゲン検査ではなくMRI検査やエコー(超音波検査)などが有用です。MRI検査によって、肉離れなのか他の病態なのか鑑別し、また肉離れの重症度を判断します。

治療

医療機関受診までの対処法

下記の基本的な応急処置を行い、出来るだけ早く医療機関を受診しましょう。
血腫の形成や炎症を最小限に抑えることが治療期間に影響するため、初期対処がとても重要です。

①安静(Rest):怪我した脚に体重をなるべくかけないようにします。
②冷却(Icing):氷やアイスパックなどにより冷却します。
 ※注意:患部を冷やしすぎると血流が滞り組織修復の妨げになるため一定間隔で30分くらいを目途とします。
③圧迫(Compression):包帯・テーピングなどにより圧迫します。
④挙上(Elevation):四肢では患部を高くします。

医療機関での治療

当院ではスポーツ競技への早期復帰のため、そして再び肉離れを起こさないよう予防のために、患者さん個々に合った治療アプローチを提供しています。実際の治療上、ポイントとなるのは以下の3点です。

①重症度に応じた治療プログラム
②スポーツ復帰の見極め
③再発予防

重症度別の治療

軽症の場合

受傷後1~2日後、ストレッチや関節を動かすリハビリを開始します。ストレッチ痛がなくなった時点でジョギングなどを開始し、その後、徐々に運動レベルを上げていきます。受傷後1〜2週間での競技復帰を目指します。

中等症の場合

患部の腫脹が無くなり、患部が伸ばされる感覚が出てからストレッチなどのリハビリをスタートします。負荷の強い動作はMRI検査で腱の修復が確認されてからの開始となります。スポーツ競技への復帰には4〜6週間を要します。

重症の場合

ギプスシーネによる隣接関節の固定や松葉杖が必要だったり、痛みが長引いたりすることがあります。そのためスポーツ選手の競技レベルによっては手術治療が考慮される場合もあります。スポーツ競技への復帰には4〜6カ月を要します。

当院の治療プログラム

理学療法士によるリハビリテーション

①セルフケア運動指導


②テーピング指導


③運動復帰までのリハビリテーション

患部機能・身体機能回復のためのメディカル リハビリテーション

競技別プログラムによるアスレティックリハビリテーション

鍼灸師による鍼灸治療

柔道整復師によるマッサージ療法

物理療法

①ソーマダイン

特殊な波動信号の微弱電流によって傷んだ組織の修復を促し、痛みを軽減させます。
局所(痛みのある部位)だけでなく、全身の生体エネルギーの流れを整え、脳の深い部分への働きかけを効率よく行います。

②マイクロカレント

マイクロカレントとは微弱電流のことです。
もともと人体に存在する電流に似た微弱電流を体内に流すことで、傷ついた組織に刺激を与え細胞の修復を促進します。

③超音波治療器

炎症組織の治癒効促進効果があり、超音波の微細な振動が細胞と細胞の間の組織液を循環・改善させて、浮腫の軽減や周辺組織の治癒力を高め炎症を助長させることなく、改善できます。

④MCC (マルチカフケア)

腕や脚の血流を一時的に制限(駆血)し、解放(再灌流)することで血流改善を促進し、病気・怪我の治療、疾病予防・健康増進、筋力アップに有効性が高い加圧治療機器です。急性期を過ぎてから行います。

スポーツ復帰の見極め

痛みによる見極め

肉離れによる痛みには、①自発痛(安静にしているときの痛み)②ストレッチ痛(伸ばしたときの痛み)③抵抗運動時痛(力を入れたときの痛み)④圧痛(押したときの痛み)の4つがあります。ストレッチ痛・抵抗運動時痛が無くなれば、軽いウォーキングや階段昇降を開始し、圧痛も完全に消失してからスポーツに復帰とします。

筋肉の回復状態による見極め

下記の方法で筋力評価を行います。健側比80%レベルを目安としてスポーツの再開を推奨しています。

①損傷した筋肉の筋力測定


②下肢(大腿・下腿)周囲径の測定

再発予防

当院では、再発予防のためにオリジナルのコンディショニング プログラムを提案しています。それは筋肉のコンディショニングと、もう一つは脳の働きを整える、ブレイン コンディションニングです。

筋肉のコンディショニング

柔軟性やの筋力の回復が不十分な状態で、日常生活やスポーツ競技に復帰すると再発する可能性が高くなります。
再発の予防のために、以下3つが重要になります。

☑筋肉の柔軟性の保持・改善
☑筋力・筋肉の強化
☑不良な姿勢・運動姿勢(フォーム)の確認・修正

そのためにストレッチの習慣化、筋バランスを考慮した適切な筋力強化、自分の姿勢・運動姿勢(フォーム)の確認と修正のために、理学療法士の指導を行っています。

当院では、ビジュアライゼーション(視覚化)を導入した指導プログラムを提供しています。自分の適切な姿勢・運動姿勢、動作を動画撮影し視覚化することで、再発しない理想の姿勢・運動姿勢勢、動作の脳内プログラムを構築するサポートを提供しています。

■MCトレーニング

■Vosaicプログラム:ビジュアライゼーション(視覚化)を使ったトレーニング

脳の機能調整(ブレイン・コンディショニング)

脳の働きは、私たちの体調にとても影響を及ぼしています。脳の状態が悪くなると自律神経系を介して肉体に様々な不調を引き起こす原因となります。自律神経のアンバランスから肩こりが起こるように、肉離れの原因である筋肉のコンディションも自律神経の状態に関与することが容易に推測されます。

当院では脳の働きを健やかするために、ニューロフィードバックを用いた脳波調整を行っています。また良好な睡眠のための睡眠・睡眠環境への指導、また「睡眠の質」の評価を提案しています。

■アルファスイッチ

脳科学を用いて脳波や脳血流から脳の状態を分析して見える化する最先端テクノロジー「ブレインテック」を使用したスマホ・タブレットアプリです。ニューロフィードバックを用いてα波のトレーニングを行うことで慢性疼痛、短期記憶力(ワーキングメモリ)の向上、スポーツや仕事・学習での集中力向上が期待されます。

■ブレインオン

人間の耳では聞こえない音域の周波数を用いて、左右の耳に先端特許技術であるピュアウェーブ音波が出力されます。このピュアウェーブ音波は、脳内でα波に相当する脳波をもたらし、聴覚的な情報を統合する脳幹の神経核を共鳴させ、結果的に大脳皮質を活性化します。
これらの作用により、α波状態の脳波(9~11ヘルツ)が誘導されて、脳の基礎リズムと自律神経系の調整能力を最適な状態に保つことが可能となります。

■ビジョントレーニング専用機器・V-training2G (東京メガネ社製)

■簡易機器・タップイット(販売元カワダ)によるビジョントレーニング

私たちの身体活動は、運動指令を出す脳と運動を行う運動器がシステムとして機能することで行われます。当院では、脳のコンディションが悪くなると、この身体システムの連動不全、エラーが生じ、怪我や障害が起こるのではと考えています。そこで〝視覚〟を使って脳と身体をフィットネスすることで、この身体システムのエラーを減らす試みを行っています。それが〝ビジョントレーニング〟です。
「ビジョントレーニング」は専用機器(V-training2G)を使用するものから、簡易機器を用いて自宅で行えるものがあります。子供から高齢者、健康スポーツからプロレベルの競技スポーツまで、多くの方々に提供しています。

田園調布 長田整形外科
院長 長田 夏哉(おさだ なつや)

【診療科目】
整形外科・リハビリテーション科・一般内科・自然療法・KITAサウンドヒーリング・ウェルネスプログラム

【略歴】
平成5年に日本医科大学卒業後、慶應義塾大学整形外科学教室に入局し整形外科専門医の研鑽を積む。平成17年に川崎市立川崎病院の医長に就任。平成17年9月に田園調布 長田整形外科を開院。

【資格】
日本整形外科学会 専門医
日本整形外科学会認定 スポーツ医
日本スポーツ協会公認 スポーツドクター

【所属学会】
日本整形外科学会
日本整形外科スポーツ学会
日本臨床スポーツ医学会
日本手の外科学会
日本運動器科学会
日本骨粗鬆症学会 等

【所属・関連協会】
一般社団法人 日本スポーツビジョン協会:JSVA 名誉会員
一般社団法人 国政生命意識協会 顧問
一般社団法人 MCA学会 理事
一般社団法人 手のひらセルフケア協会
サウンドヒーリング協会 アドバイザリーブレイン
NPO法人 予防医学療法研究会 顧問
認定NPO法人 日本YOGA連盟 アドバイザー

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