40代になって膝の痛みを感じる方は少なくありません。階段の昇り降りがつらい、立ち上がるときに膝が痛む、朝起きたときに膝がこわばるなど、さまざまな症状でお悩みではないでしょうか。仕事や家事で忙しく、なかなか病院に行く時間が取れない方も多いはずです。本記事では、40代の膝痛の原因や対処法、仕事への影響について、整形外科医が詳しく解説します。
40代で膝が痛い!原因や主な疾患をかんたんに解説
40代の膝痛の原因は、大きく分けて2つあります。1つは軟骨のすり減りによるもの、もう1つは、けがによるものです。40代は加齢による変化が始まる時期で、若いころとは違った膝のトラブルが起こりやすくなります。
最も多い原因は軟骨がすり減る変形性膝関節症
変形性膝関節症は、膝の軟骨がすり減ることで起こる病気です。40代から徐々に増え始め、膝の内側に痛みを感じることが多いのが特徴です。朝起きたときの膝のこわばり、階段を降りるときの痛み、長時間歩いたあとの違和感などが典型的な症状です。
膝を曲げ伸ばししにくくなることもあります。正座ができなくなったり、膝を完全に伸ばせなくなったりするため、職場に行くのも一苦労です。
40代で変形性膝関節症になる主な原因は、加齢による軟骨の変化です。また肥満による膝への負担増加、運動不足による筋力低下、O脚などの脚の変形も、膝に負担を与えるため、軟骨をすり減らしてしまいます。
40代は仕事に打ち込む一方運動不足になる方も多く、体重も増えやすい傾向にあります。とくにデスクワークが多い方は特に筋力が低下しやすく、膝を支える力が弱くなってしまうのです。
その他の膝痛に多い原因:半月板損傷・靭帯損傷
半月板損傷は、膝の中にあるクッションの役割をする半月板が傷つく病気です。運動中の急な方向転換や、ひねる動作で起こることがあります。膝を曲げ伸ばしするときに引っかかり感があったり、膝に水がたまったりします。
靭帯損傷は、膝を支える靭帯が傷つくけがです。スポーツ中の接触や転倒で起こることが多く、膝がぐらつく感じや、歩くときに不安定になることもあります。40代になると、若いころと同じように動けると思って無理をしてしまい、けがをすることがあります。
週末にスポーツを楽しむ方は、しっかりと準備運動・クールダウンを行うようにしてください。
同じ40代でも男女で原因が異なるの?
とくに40代の女性は、変形性膝関節症が原因であることが多いといわれています。
女性は40代後半から更年期に入り、女性ホルモンが減少します。女性ホルモンには軟骨を守る働きがあるため、減少すると軟骨がすり減りやすくなるのです。
また、女性は男性に比べて筋力が弱く、膝を支える力が不足したり、ハイヒールを履く機会が多かったりして、膝への負担が増える傾向にあることも関係しています。
40代が膝痛になりやすい要因
40代は「まだ若い」という意識はあるものの、「体力の衰え」が思いのほかあり、ギャップが大きい年代です。20代、30代と同じように動けると思って無理をすると、膝を痛めてしまいます。
また、仕事でのストレスから暴飲暴食に走り、体重が増えて膝への負担が大きくなることもあります。子どもの運動会で急に走ったり、休日に子どもと遊んで膝を酷使したりすることも膝痛の引き金になるため、日ごろから適度な運動をすることが大切です。
症状別セルフチェック:あなたの膝痛タイプを知ろう
膝の痛みは、痛む場所や動作、進行度によって原因や対処法が異なります。以下で目安となる症状と原因をまとめました。変形性膝関節症でも、けがでも、痛みや腫れが引かないときは早めに病院にかかりましょう。
痛む場所による症状判別(内側・外側・前面・後面)
痛む場所 | 考えられる原因 | 特徴的な症状 |
内側 | 変形性膝関節症、内側半月板損傷 | 階段を降りるときに痛む、O脚の人に多い |
外側 | 腸脛靭帯炎、外側半月板損傷 | ランニング後に痛む、X脚の人に多い |
前面 | 膝蓋骨周辺の炎症 | 膝のお皿の周りが痛む、階段を上るときに痛む |
後面 | ベーカー嚢腫、膝窩筋の炎症 | 膝の裏が腫れる、しゃがむと痛む |
動作別痛みチェック(歩行・階段・立ち上がり・しゃがみ込み)
動作 | 痛みの特徴 | 考えられる病気 |
歩いたとき | 歩き始めに痛む、長時間歩くと痛む | 変形性膝関節症の初期 |
階段の昇り降り | とくに降りるときに痛む | 変形性膝関節症、半月板損傷 |
立ち上がったとき | 椅子から立つときに痛む | 変形性膝関節症、膝蓋大腿関節症 |
しゃがみ込んだとき | 深く曲げると痛む、正座ができない | 半月板損傷、変形性膝関節症の進行期 |
進行度セルフチェック(初期・中期・進行期の症状)
進行度 | 主な症状 | 日常生活への影響 |
初期 | 朝のこわばり、動き始めの痛み、長時間同じ姿勢になったあと違和感が残る | ほとんど影響なし、違和感程度 |
中期 | 階段での痛み、正座が困難、膝の腫れ | 日常の動作に支障が出る、スポーツは困難 |
進行期 | 安静でも痛む、膝が変形する、歩行が困難 | 歩行に杖が必要、日常生活に大きな支障が出る |
忙しくて病院に行けない!膝痛を放置すると危険なのか?
40代は仕事や家庭で忙しく、膝の痛みがあっても後回しにしてしまうという方もいるのではないでしょうか。しかし、膝痛を放置すると取り返しのつかないことになる可能性があります。
膝痛は早めに治療することが大切
たとえば変形性膝関節症は進行性の病気です。一度すり減った軟骨は自然に元に戻ることはありません。放置すると症状が進行し、自分の力で歩くことが難しくなることもあります。
痛み止めの薬でごまかしていると、一時的に痛みは軽くなりますが、病状の進行には気づけません。痛みがないからといって無理をすると、知らないうちに軟骨のすり減りが進んでしまいます。
早いうちに適切な治療を受ければ、進行を遅らせることができます。運動療法や生活指導で症状が改善することも多く、手術を避けられる可能性が高くなるのです。
すぐに受診すべき危険サイン(レッドフラッグ症状)
以下の症状がある場合は、すぐに整形外科を受診してください。
- 膝が急激に腫れて熱を持っている(感染や急性の炎症の可能性)
- 膝に体重をかけられない、歩けないほどの激痛がある(骨折や靭帯の完全断裂)
- 膝がガクッと抜ける感じや、膝が動かなくなる(半月板損傷や遊離体の可能性)
- 安静にしていても痛みが続く
- 夜間に痛みで目が覚める
40代の膝痛はどんな治療をするの?
40代の膝痛の治療は、症状の程度や原因によって異なります。多くの場合は、まず保存療法から始め、効果が不十分な場合に手術などを検討することになります。
軽度なら保存療法
初期から中期の膝痛では、保存療法が中心となります。薬物療法では、痛み止めの内服薬や抗生物質を使うこともあります。注射療法では、ヒアルロン酸注射で関節の動きを滑らかにしたり、症状が強い場合はステロイド注射で炎症を抑えたりします。
こうした薬物治療だけでなく、運動療法(リハビリ)と組み合わせて症状を抑え、痛みを軽減させていきます。理学療法士の指導のもと、膝周りの筋力強化やストレッチを行い、膝を動かしやすくするのです。
症状が進むと手術療法が必要になることも
保存療法で改善しない場合や、症状が進行している場合は手術が必要になることがあります。関節鏡手術では、小さな傷から内視鏡を入れて、損傷した半月板を切除したり、関節内をきれいにしたりします。数日から1週間程度の入院が必要です。
重度の変形性膝関節症では、人工膝関節置換術が検討されます。傷んだ関節を人工関節に置き換える手術で、入院期間は2〜3週間程度です。手術後はリハビリが必要で、日常生活に戻るまでに1〜3か月かかります。
通院頻度は?仕事に影響は出る?
治療法によって通院頻度や仕事への影響は異なります。保存療法の場合、仕事の合間や仕事後など、自分のライフスタイルに合わせた通院頻度で治療ができるでしょう。
手術の場合は、入院期間だけでなく回復期間が必要です。その期間は手術内容によって異なりますが、デスクワークなら術後1か月程度で復帰可能ですが、立ち仕事や重労働の場合は2〜3か月かかることもあります。
医師の指導のもと、職場と相談して、復帰時期や業務内容の調整を依頼してください。症状が進行してからの治療は大掛かりになることがあるため、やはり早めの治療が大切です。
今すぐ病院に行けないときの痛みの対処法
仕事が忙しくてすぐに病院に行けない場合でも、自宅でできる対処法があります。ただし、これらは一時的な対処法なので、症状が続く場合は必ず受診してください。
ストレッチと軽めの自重トレーニング
膝の可動域を保つストレッチと、膝を支える筋力を強化するトレーニングを行いましょう。膝が痛む場合は無理せず、できる範囲で実践してください。
ストレッチの方法
- 太もも前面のストレッチ
壁に手をつき、片足を後ろに曲げて足首を持つ。太ももの前を伸ばす(左右各30秒) - 太もも後面のストレッチ
椅子に浅く座り、片足を前に伸ばしてつま先を上に向ける(左右各30秒)
筋力トレーニングの方法
- 椅子に座って膝伸ばし運動
椅子に座り、片足をゆっくり前に伸ばして5秒キープ(左右各10回) - 壁スクワット
壁に背中をつけて、膝を軽く曲げて5秒キープ(10回)
体重を減らす
体重が1kg増えると、膝への負担は3〜4kg増えるといわれています。40代は基礎代謝が落ちて太りやすい時期ですが、膝に痛みがある方は少しずつ減量を目指してください。
急激なダイエットは筋肉も落としてしまうため、月に1〜2kgのペースでゆっくり減量することが大切です。
食事は野菜を中心に、タンパク質もしっかり摂取しましょう。間食を控え、アルコールも適量にとどめると摂取カロリーを抑えられます。無理な食事制限ではなく、バランスの良い食事を続け、適度に運動することで健康的な体重を維持することができます。
歩き方や体重のかけ方に気を付ける
正しい歩き方を意識することで、膝への負担を軽減できます。背筋を伸ばし、顎を軽く引いて前を見て歩きます。歩幅は無理に大きくせず、自然な歩幅で歩きましょう。かかとから着地し、足の裏全体で体重を支え、つま先で蹴り出すように意識します。
階段では手すりを使い、降りるときは特にゆっくりと、膝に負担をかけないようにしてください。靴はクッション性の良いものを選び、すり減った靴は早めに交換しましょう。
膝に負担をかける動きを控える
膝をひねる動作、急な方向転換、ジャンプなどの衝撃を与える動きは避けましょう。正座や深くしゃがむ動作も膝に大きな負担がかかります。
床に座るときは正座を避け、椅子やソファを使用してください。物を拾うときは、膝を深く曲げずに、腰を落として拾いましょう。体重管理で運動をする場合は、水泳や自転車など膝への負担が少ないものを選びます。日常生活でこれらの動作を意識することで、膝痛の悪化を防ぐことができます。
40代からの膝痛は田園調布長田整形外科で早めのご相談を!
田園調布長田整形外科では、40代の方の膝痛に対して、一人ひとりの症状や生活スタイルに合わせた治療を提供しています。平日や土曜日のみならず、日曜日も月2~3回は診療を行っていますので、仕事で忙しい方でも通院いただけます。
膝の痛みは放置せず、早めの治療を心掛けることで、日常生活への影響も小さくなります。「最近膝が痛い」「階段がつらい」など、少しでも気になる症状があれば、お気軽にご相談ください4