医院からのお知らせ

管理栄養士のコラム「 ’’一人一人のいのち輝く毎日の食事’’」10

◯65歳以上の低栄養予防にボーンブロススープのすすめ

一般に高齢者の栄養所要量*1は、若年者と比べて必要なカロリーは低く設定されていますが、必要な栄養素は同等かむしろ高い値が要求されます。

それというのも高齢者は若年者と比べて、
・運動量の減少
・代謝の変化
・加齢に伴う骨量や筋肉量の減少が原因
・慢性的な健康状態
・複数の医薬品の使用
・体組成の変化

などのような影響を受けているからです。しかし、「栄養価の高い食品を摂り」「活動的なライフスタイルを維持する」ことが、生涯にわたって良好な栄養状態を維持し、様々なリスクを軽減でき、健康的な加齢をサポートすることにつながります。

そこで今回は、栄養価の高い食事の提案として、”ボーンブロススープ”の紹介をします。

*ボーンブロススープ:牛や鶏ガラ、玉ねぎセロリにんじんなどの香味野菜を2時間以上煮込んで作るスープのことで、レシピによっては10時間以上煮込んで作るものもあります。骨からにじみ出す栄養素としてカルシウム・カリウム・リン・マグネシウムなどのミネラルやアミノ酸をはじめ、高齢になると吸収しにくくなるビタミンB12なども栄養素としてスープの中に含まれます。

◯おすすめな理由:
・タンパク質が分解されてアミノ酸、コラーゲンなどの栄養素がたっぷり含まれている高栄養・滋養食である
「十分なタンパク質を摂る」ことは、厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」でも高齢者のフレイル予防の観点から、2020年から65歳以上のタンパク質目標量の下限を引き上げるなど重点的に推奨をしています。

・液体なので消化吸収が良い
ー「食品を噛んだり飲み込んだりする能力の低下」「喉の渇きを感じる感覚が加齢とともに鈍くなる」ことに対して、栄養価の高い十分な水分補給を食事で心がけることができます。

・腸内環境を整えるために必要なアミノ酸も豊富
ー腸内環境を整えることは免疫力のアップに繋がり、脳や体全体の健康にも繋がります。

・市販の健康食品や加工食品のような添加物や多くの砂糖などが使われていない
「健康的な食事パターンを守り、一口一口を大切にする」という観点から、安全な食事の提供にも繋がります。

そして、タンパク質の恩恵を最大限に受けるには、食べるばかりではなく、吸収と消化という観点で見ることも重要です。「食事の楽しみを作る」ということも、消化吸収能力のアップにも繋がり、食への意識を向けやすくなりますので、ぜひ友人や家族と食事を共にすることで楽しい食卓の実現を目指してください。

【ボーンブロススープの作り方】
・鶏ガラ:2kg
・水:鶏ガラ2kgに対して2〜3L(材料がつかる程度の水)
・セロリ1〜2本、玉ねぎ1個、にんじん1本などの香味野菜:(それぞれ100g程度、厳密でなくて良い)
・ローリエ1枚、ブーケガルニ1束:
・お好みで酢:大さじ2程度

  1. 鶏ガラを熱湯に潜らせてアクを取り除く
  2. 大鍋に鶏ガラ、香味野菜、水、ハーブ類を入れて沸々と煮込む
  3. 途中でアクを取りながら、2〜10時間煮込む
    追記:酢を入れるときは2. の段階で入れる

*スロークッカーで作れば4時間ほど放っておいてスープができます
*動物性のスープはどうしても苦手という方に対しては、玄米スープもおすすめです。

【玄米スープ】辰巳芳子さんのレシピより
・炒り玄米:80g
・昆布:5cm四方を2〜3枚
・梅干し:1個

  1. 「入り玄米」を作る
  2. カップ2杯(300g) を水で洗いボウルに入れる。たっぷりの水を注いで30分程度浸水してざるにあげ、6時間ほどおく。
  3. 厚手で油気のない平鍋を用意する。火力全開を10とすると7の日にかけ、鍋を温めてから玄米を入れる。
  4. 玄米全体を木べらで動かしながら5~10分程度炒ると、玄米が小麦色になり、爆(はぜ) る音が聞こえる。ここで、火力全開を10とすると3〜4の火力に弱め、玄米を炒る。
  5. 絶えず木べらを動かしながらいり、色づかせる。20分ほど経ったら紙の上に広げて粗熱をとる。
  6. 「スープ」を作る
  7. 琺瑯のポットなどに、炒った玄米、昆布、梅干し、水カップ5を入れて蓋をして中火にかける。
  8. 煮立ったら蓋をずらし弱火にする。沸々と30分間ほど炊き、味を見てこす。

Nutrition as We Age: Healthy Eating with the Dietary Guidelines/health.gov
“食と人生” /YouTubeレシピ
辰巳芳子さん玄米スープ/きょうの料理レシピ
飲む美容液ボーンブロススープ|腸活・美肌に効果的!/株式会社POSSIM

執筆者:管理栄養士井上わかこ

  1. 栄養所要量*特定の年齢層や性別集団のほとんどの人(97~98%) が1日の必要量を満たすのに十分な摂取量 ↩︎

関連記事