ドクターコラム

変形性膝関節症の人がしてはいけない運動とは?リストとその理由をわかりやすく解説【大田区・世田谷区の医師が解説】

変形性膝関節症においては、薬物療法だけでなく生活習慣の改善の一環として運動が推奨されることも多いです。しかし、すでに膝に炎症や痛みが生じている状態で実施する運動は、膝への負担を考慮しながら行う必要があり、結局どのような運動をすればよいのか、なにをしてはいけないのかわからずお悩みの方も多いでしょう。本記事では、変形性膝関節症の方がしてはいけない運動と、比較的安全にできる運動について、医師が詳しく解説します。

変形性膝関節症の人がしてはいけない動きはどういうもの?

変形性膝関節症の方は、膝への負担をなるべく減らして運動する必要があります。とくに「してはいけない動き」は膝への急激な衝撃、ひねる動作、深い屈曲を伴うものです。

これらの動きは、すり減った軟骨にさらなるダメージを与え、炎症を悪化させる可能性があります。変形性膝関節症では軟骨のクッション機能が低下しているため、こうした衝撃が直接骨に伝わりやすくなってしまうのです。

どのような動きを避けるべきなのか、基本をお伝えするので、のちに解説する運動リストと合わせて覚えておきましょう。

膝関節への衝撃で過度な負荷がかかる動き

ジャンプや着地の動作では、膝に体重の5倍もの衝撃がかかるといわれています。たとえば体重60kgの人がジャンプすると、単純計算で300kgほど力が加わることになります。運動につきものの「急停止」や、階段を降りる行為なども膝に衝撃を与える動作です。

アスファルトなど硬い地面での運動は、地面が吸収する衝撃が少ないため、膝への負担もさらに大きくなります。

膝関節にひねりが加わり負荷がかかる動き

膝のねじれを伴う動作は、軟骨や半月板に複雑な負荷を与えます。たとえばテニスやサッカーのように、ボールを追いかけて急に方向転換をするような動作は、膝を曲げることで圧縮される力と、ねじれる力が同時に発生します。

すると、膝の内側や外側に過度なストレスがかかるのです。変形性膝関節症の方がこうした動きを続けると、O脚やX脚などの変形が進行する可能性もあります。

正座・しゃがみ込みなどの動き

深く曲げることによって、膝関節の内圧が上昇して膝に圧力がかかります。和式トイレを使用したり、庭仕事でしゃがみ込んだりするような動作は、膝を深く曲げるため、軟骨への圧迫も強くなるのです。

スポーツの際はここまで深くしゃがむことは多くありませんが、トレーニングのために深くしゃがむことも多いため、注意が必要です。

変形性膝関節症の人がしてはいけない運動リスト

運動の種類 膝への負荷
ランニング・ジョギング着地するときに繰り返される衝撃
  バレー・バスケットボールジャンプと着地の繰り返しで膝に過度な圧力がかかる片足で着地することもあり、より負荷が大きくなりやすい
テニス・サッカー急な方向転換を繰り返すことによる複合的な負荷が大きい
重りを使ったスクワット重りを追加した分だけ増える深く曲げて維持する姿勢が膝を圧迫する

しないほうがよい運動を続けるとどうなるの?

変形性膝関節症の人がしないほうがいい運動を続けると、膝関節の軟骨の摩耗が急速に進行する恐れがあります。

負荷をかけすぎると、軟骨を分解する酵素が増加して、軟骨の主要構成要素であるコラーゲンとプロテオグリカンが破壊されやすくなるのです。また衝撃などによって、軟骨細胞が頻繁にアポトーシス(細胞死)を起こしてしまうと、新しい軟骨の生成が追いつかなくなります。

衝撃を繰り返すと刺激になるため、炎症も悪化します。軟骨がほとんどなくなれば、骨と骨が直接こすれ合う状態になり、激しい痛みで歩くことも難しくなるでしょう。O脚やX脚が悪化し、人工関節置換術が必要になる可能性が高まるため、膝を痛めている方が運動するときは、医師に相談しながら適切に行う必要があります。

変形性膝関節症でも安全性が高い運動リスト

変形性膝関節症の人が運動するうえで、比較的安全性が高いと考えられる運動をまとめました。

運動の種類安全性が高い理由作用
水中ウォーキング・アクアビクス浮力によって膝へかかる負担が大きく減る関節の可動域を広げる
サイクリング・エアロバイク座るため膝へかかる力が減る筋力を維持・向上させて膝の安定感をサポートする
自重による筋力トレーニング浅いスクワットなどにとどめることで、膝へかかる力を減らせる筋力を維持・向上させて膝の安定感をサポートする
ストレッチ・ヨガほとんど負荷がない柔軟性向上、関節のこわばり改善

水中は浮力によって、体重の負荷が大幅に軽減されます。また温水は筋肉の緊張をやわらげてくれるため、動きにくく硬くなってしまった関節のトレーニングに最適です。

サイクリングは座りながら行うため体重が分散され、膝への負荷が少ないです。ペダルを回す動作が関節を滑らかに動かす練習にもなります。

大腿四頭筋など膝を支える筋肉を鍛えれば、普段の生活での衝撃も減らすことができ、安定感も高められます。椅子からの立ち座りや壁を使った浅いスクワット(50度以内)で軽い筋トレをするとよいでしょう。

変形性膝関節症の人が運動するときのポイント

変形性膝関節症の人が運動をするときは、医師の指示に従い、様子を見ながら行うよう気を付けましょう。3つのポイントにまとめました。

ウォーミングアップとクールダウンをしっかり行う

運動前は10〜15分間のウォーミングアップを行ってください。軽く歩き、関節を回すストレッチを取り入れましょう。関節液の粘性が下がり、動きがスムーズになると考えられています。

クールダウンも同様に10〜15分間行い、静的ストレッチ(動きを止めるストレッチ)で筋肉をゆっくり伸ばしましょう。運動後のアイシングは炎症を抑制してくれるため、熱感がなくても軽く冷やす習慣をつけてみてください。

減量も視野に入れて運動する

体重が1kg減ると、膝への負荷が4kg軽減されるといわれています。運動による負荷は体重にも左右されるため、平均体重よりも重い方は、減量も視野に入れてみましょう。日常生活動作も楽になり、運動への意欲も高まります。

痛みが出たときはすぐに対処する

運動中に痛みが強くなった場合は、直ちに運動を中止してください。運動後、痛みが続く場合は、運動強度が高すぎるサインです。

急激な痛みや腫れが生じた場合は、安静にしてアイシングしてください。痛みが強い場合は運動を中止し、水中運動や関節可動域運動に切り替え、運動強度を半分程度にしましょう。症状が3日以上改善しない場合や、膝に熱感がある場合は、速やかに医師に相談してください。

変形性膝関節症の運動療法は田園調布長田整形外科へ

田園調布長田整形外科では、変形性膝関節症で悩む患者様、一人ひとりの症状に応じた運動療法を提供しています。運動療法と併せて、ヒアルロン酸注射やPRP療法などの治療も行っています。膝の痛みでお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。

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