ドクターコラム

膝がポキポキ鳴る原因と仕組みをわかりやすく解説!【医師監修】

膝を曲げ伸ばしたときに「ポキポキ」という音がなったら、不安を覚えるかもしれません。実はこの音には「心配いらない音」と「注意が必要な音」があります。今回は膝がポキポキ鳴る原因から改善方法まで、医師の視点から詳しく解説します。

膝がポキポキ鳴る原因とは?なぜ膝が鳴るのか仕組みを解説

膝から聞こえる音は医学的に「関節音」と呼ばれ、主に2つのタイプに分けられます。「ポキポキ」「パキパキ」という音は多くの場合心配ありませんが、「ミシミシ」「ギシギシ」という音は関節トラブルのサインかもしれません。音の種類を知ることで、適切な対応ができるようになります。

生理現象で膝がポキポキ鳴るケース(痛みなし)

膝の「ポキポキ」音の正体は「キャビテーション現象」です。膝関節は関節液という潤滑油で満たされており、急に膝を動かすと関節内の圧力が変化し、関節液に小さな気泡ができます。この気泡が弾ける音が「ポキッ」という音なのです。

これは指の関節を鳴らすのと同じ仕組みで鳴るため、痛みがない場合は基本的に心配ありません。ただし音が頻繁に鳴ったり、違和感があったりする場合は、念のため診察を受けるとよいでしょう。

関節や半月板、靭帯などのトラブルによるケース(痛みあり)

「ミシミシ」「ギシギシ」「ゴリゴリ」といった擦れるような音は、関節内でトラブルが起きている可能性があります。

軟骨のすり減り、半月板の損傷、靭帯の異常などが原因となることが多く、痛みを伴う場合は早めの受診が必要です。音とともに膝の腫れ、熱感、動かしにくさなどがある場合は、整形外科での精密検査を受けるようにしましょう。

変形性膝関節症によるもの

変形性膝関節症は50歳以上に多く見られ、膝の軟骨が徐々にすり減ることで起こります。初期は小さな音がする程度ですが、進行すると骨同士がぶつかり「ゴリゴリ」という激しい音とともに強い痛みを伴うことがあります。

とく女性に多い傾向があり、肥満、O脚、過去の膝のケガなどとくにスポーツなどをしていなくてもなる病気です。音だけでなく、起床時の膝周りのこわばり、階段での痛み、正座ができないなどの症状が現れたら早めに受診しましょう。

半月板や靭帯の損傷によるもの

半月板は膝関節のクッション役を果たしており、スポーツでの急な方向転換や加齢による変性で損傷しやすくなります。損傷すると「ポキポキ」音とともに膝の引っかかり感(ロッキング)や痛みを伴います。

靭帯損傷、特に前十字靭帯損傷では膝の不安定感が強く現れます。放置すると変形性膝関節症へ進行するリスクが高いため、早期の適切な治療が必要です。これらの損傷はMRI検査で詳しく診断できるため、設備の整った整形外科を受診しましょう。

O脚などの骨格の歪みが原因の場合

O脚やX脚は膝関節に偏った負担をかけ、音が鳴る原因となります。骨格の歪みは生まれつきの場合もありますが、日常の姿勢や歩き方、筋力のアンバランスが原因となることも多いです。インソールの使用、筋力トレーニング、ストレッチなどで改善が期待できます。

年齢別に見る膝がポキポキ鳴る原因と特徴(10代〜60代まで)

膝の音は年齢により原因が異なる場合があります。成長期では骨の成長に伴う一時的な現象が多く、基本的には心配する症状ではありません。中高年では関節の老化が主な原因となります。各年代の特徴を理解し、適切な予防と対処を心がけましょう。

子供や10代(小学生・中学生・高校生)特有の原因

子供や10代の膝の音は成長期特有の現象であることが多いです。身長が急激に伸びる期間は、骨や筋肉が急速に発達するため膝にもさまざまな変化が起こります。

子供の関節は大人より緩いため気泡ができやすく、ポキポキ音が鳴りやすいです。多くは心配いりませんが、痛みや腫れを伴う場合は、成長期特有の疾患の可能性もあるため、整形外科の診察を受けてください。

成長期に膝が鳴る理由

成長期は骨の成長スピードに筋肉や腱の成長が追いつかず、筋肉が常に引っ張られた状態になります。これにより関節が不安定になり、音が鳴りやすくなるといわれています。

成長期の骨には「骨端線」という軟骨部分がありますが、この部分は構造的に弱く、スポーツで繰り返し負荷がかかると損傷しやすい部位です。成長が落ち着けば自然に音も減ることが多いですが、痛みがある場合は落ち着くまで休息を設け、必要に応じて診察を受けましょう。

サッカーやスポーツで膝が鳴ることは問題?

スポーツをしている子供の膝から音が鳴ることは珍しくありません。音だけで痛みがない場合は、運動前後のストレッチと筋力を強化させることで、けがを予防できます。

しかし痛みを伴う場合は「オスグッド・シュラッター病」などの成長期スポーツ障害の可能性があります。痛みを我慢して続けると成人後も症状が残ることがあるため、数日休んでも治らないなど、異常を感じたらすぐに診察を受けましょう。

20代~30代の膝が鳴る主な原因

20代~30代での膝の音は、運動不足による筋力低下、デスクワークによる姿勢の悪化、急激な体重増加などが主な原因となることが多いです。社会人になってから運動量が減ると、膝を支える力が弱くなり音が鳴りやすくなります。

また週末だけ激しい運動をする「週末アスリート」は、準備運動不足により膝を痛めやすい傾向があります。日常的な運動習慣を身につけ、適正体重を維持することが大切です。

40代〜60代に多い膝がポキポキ鳴る原因とそのリスク

40代以降は膝の音が変形性膝関節症の前兆である可能性が高くなります。長年の使用により軟骨がすり減り始め、関節液の分泌も低下してきます。50歳を過ぎると発症リスクが急激に高まり、女性は男性の4倍も発症しやすいとされています。音の頻度が増加し、他の違和感が増えてきた場合は「気にしすぎかな?」と放置せず、早めに受診しましょう。

膝がポキポキ鳴るときの自分でできる改善方法

膝への負担は、日常生活を工夫することでも対策できます。膝を支える筋肉を強化し、負荷を減らすことが重要です。ただし痛みがある場合は無理をせず、医師の指導のもとで行いましょう。

肥満や運動不足を解消する

体重が1kg増えると階段を降りる際の膝への負担は3〜4kg増加するといわれています。肥満体型の方などは少し痩せるだけでも、膝にかかる力を減らせるでしょう。

運動は膝に優しい水中ウォーキングや、ウォーキングから始めてください。健康的な体重のためには、1日30分程度の有酸素運動を週3〜4回行うことが理想的です。急激なダイエットは筋肉も減らしてしまうため、月1〜2kgのペースでゆっくり減量しましょう。

膝周辺を強化する筋トレとスクワット

膝を支える大腿四頭筋の強化は、膝を支えて負担を減らしてくれます。椅子に座った状態で片足を伸ばし、かかとを床から10cm上げて5〜10秒キープする運動を左右10回ずつ、1日3セット行いましょう。

スクワットは正しいフォームが重要で、無理をすると膝を傷めることがあるため、人にフォームを見てもらいながらすると安心です。まずは負担の少ないトレーニングから始めるのがおすすめです。

膝を改善するストレッチやマッサージ

太ももの前側と裏側のストレッチは欠かせません。

前太もも:横向きに寝て上側の足を後ろに曲げ、足首を持って太ももの前を伸ばす
裏太もも:仰向けに寝て片足を伸ばしながらお腹に寄せ、両手で抑えて太ももの裏を伸ばす

お風呂上がりの体が温まっているときに行うとより効果的です。

サプリメント(コラーゲンなど)の効果はある?

グルコサミン、コンドロイチン、コラーゲンなどのサプリメントは健康的な軟骨の維持に役立つと考えられていますが、ポキポキ鳴る原因を直接改善する効果はありません。あくまで健康な膝を維持するためのサポートにつなげ、予防的に活用することになります。

膝がポキポキ鳴る症状を病院で診てもらう場合のポイント

膝の音が続く場合や痛みを伴う場合は、専門医の診察を受けることが大切です。適切な医療機関を選び、早めに診断を受けることで膝の健康を守ることができます。

何科に行くべき?(整形外科・整骨院・接骨院の違い)

膝の音や痛みが生じた場合は、まず整形外科を受診しましょう。整形外科は医師が診察し、レントゲンやMRIで正確な診断ができます。薬の処方や注射治療も可能です。

整骨院や接骨院は柔道整復師が施術を行う施設で、レントゲンやMRIは使用できず、正確な検査ができません。まずは整形外科で正確な診断を受けてください。

病院ではどんな治療や検査を受けるのか?

病院では問診、触診の後、レントゲン撮影を行います。必要に応じてMRI検査で軟骨や半月板、靭帯の状態を詳しく調べ、血液検査で他の病気との鑑別を行うこともあります。治療は疾患・怪我の内容によりますが、多くの場合は薬物療法、ヒアルロン酸注射、理学療法などの保存療法から始め、手術は必要に応じて検討することになります。

レントゲンやMRIの検査内容

レントゲンは膝の骨の状態を確認する基本検査で、関節の隙間や骨の変形を評価できますMRIは軟骨の厚さ、半月板の損傷、靭帯の状態などを詳しく調べます。疑われる疾患や怪我がわからない場合は、いずれの設備もある医療機関の診察を受けるとスムーズです。

手術が必要になるケースとは?

膝の音だけで手術が必要になることはほとんどありません。しかし、重度の変形性膝関節症と診断されてから保存療法を6ヶ月以上続けても改善しない、日常生活に支障をきたす半月板損傷などでは手術適応となることもあります。関節鏡手術、骨切り術、人工関節置換術などがあり、基本的には身体への負担が少ない方法から検討されます。

膝がポキポキ鳴ることを予防する日常生活のコツ

膝の音を予防するには日常生活での小さな工夫の積み重ねが大切です。膝への負担を減らしながら、膝を支える筋肉を維持することで将来の膝トラブルを予防できます。

歩くときや階段を昇る際の膝に優しい動作

歩く際はかかとから着地し、足の裏全体で体重を受け止め、最後に親指で蹴り出すように意識しましょう。階段を上る時は太ももの筋肉を使い、手すりで膝への負担を軽減できます。下りる時は膝への負担が上りの3〜4倍になるため、ゆっくり一段ずつ降りることが重要です。

膝を守るサポーターやテーピングの使い方

膝サポーターは関節を安定させ負担を軽減します。日常用は薄手で動きやすいもの、スポーツの際はサポート力のあるものが適切で、医師の指導のもと活用することが大切です。長時間の使用は筋力低下につながるためです。

テーピングはより力のかかり方を細かく調整できますが、正しい貼り方を専門家に指導してもらう必要があります。

ランニングや自転車など運動のときに膝を守る方法

ランニングでは適切なシューズ選びが最重要です。走る前に10〜15分のウォーミングアップを行い、柔らかい路面を選ぶとより膝への衝撃が軽減されます。

自転車はサドルの高さが重要で、ペダルが一番下で膝が軽く曲がる程度が理想的です。どちらの運動も短時間から始め、運動後はアイシングを15分程度行い、炎症を予防しましょう。

まとめ|膝がポキポキ鳴る原因・痛みの有無別対処法・治し方・病院の選び方を総チェック

膝がポキポキ鳴る現象は多くの場合、関節液の気泡が弾ける生理現象で心配ありません。しかし「ミシミシ」「ギシギシ」という音や痛みを伴う場合は、変形性膝関節症や半月板損傷などのサインかもしれません。

年齢により原因は異なり、成長期では一時的な現象が多い一方、40代以降では関節の老化が主な原因となります。改善方法は適正体重の維持、膝周りの筋力強化、ストレッチが基本です。

症状が続く場合は整形外科を受診し、正確な診断を受けることが大切です。田園調布長田整形外科では、膝の治療も行っています。ポキポキなる膝の音などが不安な方は、まずはご相談ください。

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