ドクターコラム

変形性膝関節症へのヒアルロン酸注射の効果は?仕組みや治療頻度・期間について【大田区・世田谷区の整形外科医が解説】

膝へのヒアルロン酸注射は、軟骨のすり減りなどにより痛む関節の症状を緩和する治療方法です。手術を避けたい方や、まだ症状が軽度から中程度の方であれば比較的すぐに痛みが緩和されます。本記事では、ヒアルロン酸注射の効果や仕組み、治療期間などについて、医師が詳しく解説します。

変形性膝関節症への「ヒアルロン酸注射」の効果

変形膝関節症は、軟骨がすり減ったり、軟骨の破片で炎症を起こしたり、関節内の潤滑液が減って軟骨がスムーズに動きにくくなったりして痛みが生じます。

ヒアルロン酸注射は潤滑液の減少で、日常生活を送りやすくするための保存療法です。関節内に直接ヒアルロン酸を注入することで痛みをやわらげる効果があります。

軟骨を再生する、炎症を治すといった効果はないため、運動や生活習慣の改善などと組み合わせながらの治療が必要です。

痛みをやわらげ動きやすくする

歳をとってくると、関節内の潤滑液が減り、クッション性が失われることで膝を動かすときに痛みを感じるようになります。この潤滑液の主成分がヒアルロン酸です。

ヒアルロン酸を関節に直接注入することで、関節内の滑りを良くして軟骨の摩擦を軽減し、痛みをやわらげることができるという仕組みです。

痛みを緩和させることで、膝を動かしやすくし、筋肉量が低下したり、関節が硬く動きにくくなったりすることを予防できます。

抗炎症作用

ヒアルロン酸は抗炎症作用も報告されており、関節内で炎症を引き起こす物質の抑制にも役立ちます。しかし、急激な炎症や強い炎症にすぐ効くような作用ではないため、内服薬や他の薬物治療などと組み合わせる場合もあります。

ヒアルロン酸注射と他の注射治療の違い

ヒアルロン酸注射は軽度の場合、ステロイド注射は痛みや炎症が強い場合に限定的に投与されます。PFC-FD注射は再生医療の一つで、抗炎症作用・鎮痛作用が期待できます。

治療の種類主な作用効果が持続する期間(目安)特徴
ヒアルロン酸注射痛みをやわらげ、炎症を抑える1〜2週間繰り返し投与可能
ステロイド注射強い痛みと炎症を抑える2〜4週間頻繁に投与できるものではない
PFC-FD注射炎症を抑え、痛みの緩和を促す3〜6ヶ月自分の血小板由来の成長因子を活用して機能改善をサポートする、自由診療

膝へのヒアルロン酸注射のメリットとデメリット

メリットデメリット
痛みをやわらげられる簡単に施術を受けられる身体への負担や副作用が少ない日常生活への影響が少ない健康保険で受けられる効果は一時的(1〜2週間)複数回の通院が必要症状が進行していると効果が限定的痛みがやわらぐことで動かしすぎて負荷をかけてしまうこともある

最大のメリットは、痛みを軽減させることで動きやすくなることです。膝の痛みのせいで歩いたり階段を昇り降りしたりするのが辛くなると、日常生活で動くのも億劫になってしまいます。

日常生活での活動が減れば、筋力が低下し、膝を支える力が弱まってさらに症状が悪化するという悪循環に陥ってしまいます。

ヒアルロン酸注射により痛みをコントロールしながら適度な運動を続けることで、この悪循環を予防し、筋力を取り戻したり可動域が狭まらないようにしたりするのを助けることができるのです。

また、手術と比較すると身体への負担が少なく、年齢が高めの方でも安心して受けられます。しかし、根本的な治療ではないため、定期的な通院で医師と相談しながら治療を進める必要があります。

膝へのヒアルロン酸注射はどんな人に向いている?

膝へのヒアルロン酸注射は、初期から中期程度の変形性膝関節症の方に適した治療です。膝が痛み始めたばかりの方や、症状が軽度ですぐに痛みをやわらげたい方に向いています。

疾患や年齢で手術のリスクが高い方は、まずヒアルロン酸注射での治療を受けるという場合が多いでしょう。まだ人工関節に置き換えるほどの年齢に達していない場合にも、検討されます。

一方で症状が進行している場合には、ヒアルロン酸を注入しても痛みが引かない可能性が高いです。炎症が強くヒアルロン酸では鎮静できなかったり、潤滑液を増やすだけでは痛みの原因を取り除ききれなくなったりするためです。

ヒアルロン酸注射はいつまで打つ?

膝へのヒアルロン酸注射による治療期間は、症状の程度だけでなく個人の体質によっても左右されます。関節に注入したヒアルロン酸は徐々に体内に吸収されていくためです。以下では一般的なものを紹介します。

一般的な頻度と治療期間

1回の注射による効果は1〜2週間程度持続するといわれているため、最初は週1回の治療を5回繰り返します。その後も治療が必要であれば、2〜4週間に1回の頻度で継続的に投与することになります。

個人差はありますが3〜6ヶ月程度、様子を見ながら治療を続けることが一般的です。

症状が進行して効果を感じなくなってきたら別の治療も

ヒアルロン酸注射による治療を続けても痛みがやわらがない場合や、徐々に注射による効果がなくなってきたと感じてきた場合は、他の治療が必要です。

進行がそれほど進んでいなくても、早いうちからPRP療法をはじめとするいわゆる再生医療を受けるケースもあります。変形性膝関節症が進行して、注射を受けても日常生活に支障が出るようになってしまった場合は、人工膝関節置換術(手術)が選択肢となってきます。

膝へのヒアルロン酸注射の痛みや副作用

細い針を使用するため、注射時の痛みは一般的な採血程度です。注射後2〜3日は違和感や軽い痛みを感じることがありますが、日常生活へ支障が出ることはほとんどありません。

ヒアルロン酸注射の副作用はほとんどありませんが、注射した場所の腫れや赤みが見られることがあります。また注射による治療のため、極めて稀ですが、感染(化膿)リスクがあります。ヒアルロン酸注射を受けたあとに、発熱や激痛が生じた場合は速やかに受診してください。気になる症状があれば、医師に相談しましょう。

変形性膝関節症の痛みで悩んでいる方は田園調布長田整形外科へ

田園調布長田整形外科では、膝の痛みや変形性膝関節症と診断されてお悩みの方のため、さまざまな治療をご用意しております。膝の痛みの治療は、多岐にわたる原因にアプローチし、生活習慣などの改善も必要となることが多いです。

ヒアルロン酸注射はもちろん、リハビリテーションや生活指導なども行っておりますので、膝の痛みでお悩みの方は、お気軽にご相談ください。

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