朝起きると首の後ろや首から肩にかけての痛みや首を動かせないなど多くの方が経験している『寝違え』。睡眠中の不自然な姿勢や体に合わない寝具などの睡眠環境が原因とされ、数時間から数日で痛みが改善し徐々に首を動かすことで治っていくのが一般的です。
しかし、旅行先で初めて使用する寝具、海外旅行などの長時間フライトや深夜バスで寝ても寝違えを起こさない場合があります。ところが、いつも使っている寝具で寝違えることもあります。『寝違え』は、睡眠時の姿勢や寝具だけが原因ではなく、「体調」も関係しています。つまり、『寝違え』はたまたま起きた「外傷(けが)」ではなく、「不調」をあらわすサインなのです。
この記事では、寝違えの原因や対処法、予防法について解説します。日頃からできる予防法から当院で行っている予防法についても紹介するので、寝違えによる痛みで悩んでいる人はぜひ参考にしてください。
■「寝違え」の原因
①睡眠時の環境
寝違えの主な原因は、睡眠時の「姿勢」です。寝返りが打てないような不自然な姿勢で眠り続けると一部の筋肉が阻血という血液の供給が不足の状態に陥ります。通常は体勢が苦しければ無意識に寝返りを打って、首に負担がかからない体勢に戻りますが、寝返りが打てない環境下の場合は長時間に渡って首まわりの筋肉に負担をかけ寝違いを起こすこともあります。
②寝具(枕・マットレス)
寝具については様々な見解があります。枕が合わない、特に枕の「高さ」で姿勢が不自然になり、『寝違え』を起こすとよく言われています。またマットレスの沈み込みも要因として挙げられ商品競争も盛んに行われています。
寝具においても最も大切なポイントは、睡眠環境と同様に「寝返りがスムーズにできること」です。その点から自分に合った寝具をトータルで考えていくのが重要です。
③自律神経の崩れ
デスクワークや家事で同じ姿勢を長時間続けている人や運動不足の人、頭で考える作業が多い人は睡眠に入ってもリラックスできる状態にならず、常に首の筋肉に力が入ることで過度なストレスがかかることで寝違えが起こることがあります。
④内臓機能の低下
食べ過ぎ、飲みすぎによって内臓機能が低下し寝違えの原因ともなります。これは舌診によって内臓(消化器や肝臓など)の疲れを確認しています。特に飲酒後は筋肉内の血流が低下しやすくなり、また酔っていると寝返りの回数が少なくなることから『寝違え』を起こしやすくなります。
当院では自律神経測定や舌診(東洋医学的観点からの体調確認)などを行い、「寝違え」の患者さんの体調を確認しています。また自分の体調を理解してもうことで、『寝違え』の予防を行っています。
■治療
痛みが強く首が動かせない場合は、「痛い」と感じる動作は避けてください。
医療機関で処方される湿布、消炎鎮痛薬や筋弛緩薬の内服も有効です。こむら返りの治療で使う漢方薬(芍薬甘草湯)が有効です。市販薬の消炎鎮痛薬・湿布も同様ですが、痛みが強い場合、手足のしびれなど他の症状がある場合には、整形外科を受診して他の病気の可能性を確認する必要があります。
痛みが和らぎ、首は動かせるようになったら、温めたり、ストレッチ・マッサージなどで血流を良くして回復を促します。痛みを我慢してストレッチ・マッサージをするのは逆効果の場合もあるため、治療の効果を確認しながら自分に合った治療方法を考えていく必要があります。改善しない場合や自分に合った方法が分からない場合は、整形外科を受診しましょう。
寝違えに効果のあるツボ(肩甲骨の真ん中付近にある”天宗”)を刺激するのも一つの方法です。
■予防
自身の生活習慣・睡眠習慣を確認して、体調を整えることが「寝違え」の予防に最適です。
①睡眠完了を整える
適度な寝返りできる寝具(布団・ベットの広さや枕の高さ)を選びましょう
②適度な室温設定
温度が低い環境で寝ると「血流悪化」「筋肉硬直」になりやすくなります。冬場はもちろん、夏場もクーラーで体を冷やしすぎないように気を付けましょう。夏場は就寝前までに部屋を冷やし、無理のない範囲でクーラーを消して就寝することをおすすめします。
③電磁波対策
寝室のWi-Fiを切る、枕元に携帯電話・スマホなどを置かない、寝室の電化製品のコンセントを抜くことなどをおすすめします。科学的根拠はありませんが、電磁波によって自律神経へ影響を与える可能性があると考えています。
④自然音療法
自然音は自律神経のバランスを整えたり、セロトニン・オキシトシンなどの脳内の神経伝達物質分泌を促す効果があります。当院ではサウンドヒーリング導入しており、川のせせらぎ、波や風の音、鳥や虫の音などの音が、同時多発的に生じています。これらの音には、様々な帯域の周波数が含まれ、人が感知できない領域に至るところまで広がり、豊かな倍音と1/fゆらぎをもって、私たちには、心地よく感じられ、自律神経のバランスを整え、自然のリズムを取り戻します。
体感音響による音の振動は、骨伝導によって全身の末端まで素早く伝わり、細胞一つひとつにマッサージ効果を生み、血流と代謝を促し、自律神経系統を整えます。呼吸によっても、特にゆっくりした深い呼気には副交感神経の亢進が見られ、自律神経が整います。
⑤就寝前に入浴する
入浴はシャワーではなく湯船に浸かることが大切です。体の深部から温めることでリラックス効果を促し緊張状態を和らげます。就寝前2-3時間前の入浴がおすすめです。
⑥寝る直前までスマホやPC作業はしない
自律神経を刺激しないために、入浴後就寝前はなるべく脳を休息モードにしましょう。
⑦飲酒・過度に疲れた状態の対応
飲酒後や疲労が溜まっているときは、寝る前に経口補水液などでミネラル分を補給するのがおすすめです。ミネラル分摂取は血流の低下を防ぎ、寝違えの予防につながります。
■当院推奨!『寝違え』予防セルフケア
自律神経バランスを整え、筋筋膜の緊張の緩和、全身の血行促進のためのセルフケアを提供しています。デスクワークの合間、寝る前などで自分に合った方法を使って、体調、心身の状態を整える習慣づけるようにしましょう。
①中指回し(龍村式指ヨガ)
手指を刺激しながら、合わせて呼吸法も行うことで、全身でヨガをやっているのと同じような効果が得られます。書籍も好評、多くのメディアに記事掲載。
②頭皮ほぐし・頭蓋骨リフト
私たちの体は、筋膜が全身をボディスーツのように覆っており、頭頂部には帽状腱膜という筋膜があります。そこから全身の筋膜につながっています。頭は脂肪も筋肉もないので筋膜に触れやすく、筋膜の状態がよくわかります。ここがカチカチなら全身の筋膜も張り詰めていて、首回り、背部もカチカチです。頭皮をもむと、全身の筋膜をよい状態に戻します。
③リセット®
「自律運動による心と体の自己回帰法」
ポリヴェーガル理論(脳神経生理学)を基盤とした療法で、侵襲性がなく安全でホリスティックに高い効果を持ち、日本とアメリカを始め欧州の各国に拡がり、医療施設や大学などの教育機関、福祉施設などで広く使われています。
国内外の大学との研究協力などが行われ、RSA(呼吸性心拍変動)、オキシトシン測定等で高い効果のエビデンスも得られています。2019年には、日本救急救命士協会との連携活動(“命を守る人”を守るための活動)が始まり、リセット®が日本救急救命士協会の公式メソッドとして採用されました。
リセット®:予防医学療法研究会ホームページ:https://www.jpmi-reset.com/
■まとめ
寝違えの予防に最も大切なのが「体調」です。そして体調を整えるために不可欠なのが良好な睡眠です。
睡眠の質を高めるために、寝る前までの時間の過ごし方、日頃の生活習慣を再確認してみてください。
田園調布 長田整形外科
院長 長田 夏哉(おさだ なつや)
【診療科目】
整形外科・リハビリテーション科・一般内科・自然療法・KITAサウンドヒーリング・ウェルネスプログラム
【略歴】
平成5年に日本医科大学卒業後、慶應義塾大学整形外科学教室に入局し整形外科専門医の研鑽を積む。平成17年に川崎市立川崎病院の医長に就任。平成17年9月に田園調布 長田整形外科を開院。
【資格】
日本整形外科学会 専門医
日本整形外科学会認定 スポーツ医
日本スポーツ協会公認 スポーツドクター
【所属学会】
日本整形外科学会
日本整形外科スポーツ学会
日本臨床スポーツ医学会
日本手の外科学会
日本運動器科学会
日本骨粗鬆症学会 等
【所属・関連協会】
一般社団法人 日本スポーツビジョン協会:JSVA 名誉会員
一般社団法人 国政生命意識協会 顧問
一般社団法人 MCA学会 理事
一般社団法人 手のひらセルフケア協会
サウンドヒーリング協会 アドバイザリーブレイン
NPO法人 予防医学療法研究会 顧問
認定NPO法人 日本YOGA連盟 アドバイザー