急な膝の痛みは中高年の方に多い悩みです。膝の痛みは加齢で現れていることもあれば、思わぬケガや病気が隠れていることもあります。本記事では急な膝の痛みで考えられる主な原因と、対処法、病院に行くかどうかの目安などをわかりやすく解説します。
急に膝が痛いときに考えられる主な原因
急に膝が痛むとき、多くの場合「関節のすり減り」「ケガ」「使いすぎ」「病気」の4パターンの原因が考えられます。痛む場所と発症状況を照らし合わせれば、おおまかな原因を推測できます。
加齢による変形性膝関節症
中高年の膝痛で最も多い原因の一つが、変形性膝関節症です。膝関節の軟骨がすり減って関節が変形し、痛みや腫れが生じる疾患です。軟骨は膝の骨と骨の間にある組織でスケートリンクよりも摩擦係数が小さく、関節がスムーズに動くために非常に重要です。
年齢とともに摩耗して薄くなりますが、最近の研究では軟骨が摩耗する原因は半月板の逸脱や断裂にあることが分かってきました。40歳以降、半月板を如何に健康に保つかが重要です。軟骨摩耗が進行して骨が露出すると、骨同士が直接こすれ合ってしまうため、炎症が起こり痛みを感じます。
変形性膝関節症と診断されたら、痛み止めやヒアルロン酸注射、運動療法などで対処療法を受けます。すり減ってしまった軟骨は治りませんが、最近では再生医療などにより症状の進行を遅らせる治療も可能となってきています。
衝撃やけがによる損傷が原因のとき
転倒やスポーツ中の急なひねり、交通事故などで膝をぶつけたりひねったりすると、関節内部の半月板や軟骨、靭帯(じんたい)などが傷つき、鋭い痛みが生じます。こうした外傷による痛みは受傷直後から強く、膝が腫れて曲げ伸ばしがしにくくなるのが特徴です。損傷の程度によっては痛みで膝に体重をかけられず、歩けないこともあります。
半月板損傷
半月板は膝関節の内側と外側に一つずつある三日月状の軟骨です。膝のクッションとして衝撃を吸収していますが、ねじれる力や圧力が急激に加わると亀裂が入ったり裂けたり(断裂)することがあります。スポーツ中に膝をひねったり、高所から飛び降りて着地したりした際に起こりやすいです。
半月板は一度損傷すると、自然には治らない組織です。痛みが強い場合や、膝の曲げ伸ばしで痛みや引っかかりを感じる場合、途中で膝が動かなくなる(ロッキング)状態になる場合は、すみやかに病院を受診しましょう。基本的には安静にし、少しずつリハビリを行いますが、ロッキングや引っかかり感が改善しない場合は内視鏡による手術が必要となることもあります。
靭帯損傷
膝には骨同士をつなぎ関節を安定させる靭帯が4本あります(前十字靭帯・後十字靭帯・内側側副靭帯・外側側副靭帯)。膝に加わる過度な力によって、これらの靭帯が引き伸ばされたり切れたりすることで靭帯損傷が生じます。ジャンプの着地に失敗したり、スポーツでタックルを受けたり、交通事故で膝を強打したりしたときに起こりやすいケガです。
前十字靭帯が完全に断裂した場合、膝関節が不安定になり、膝が崩れるような感覚が生じます。膝崩れが複数回起こると、軟骨や半月板を傷つけてしまうため手術が必要な場合もあり、早めに受診する必要があります。
過剰な負荷や摩擦による炎症が原因のとき
膝に急激な外傷はないのに、使いすぎや繰り返しの負担によって、ある日突然痛みが現れるケースもあります。日々のランニングや運動、長年の膝への負担が蓄積することにより、関節や周囲の組織に炎症が起きて痛みが生じるのです。最初は運動のあとなどに「何となく膝が痛い」と感じる程度でも、無理を重ねると炎症が悪化することがあるため、違和感があるなら受診しましょう。
疲労骨折
疲労骨折とは、大きな怪我をしていないのに骨折が生じる 怪我です。走る・跳ぶなどの動作を日々繰り返す中で、骨に加わる衝撃が蓄積して限界を超えると発生します。スポーツ選手や、骨が弱くなっている方に多く、膝蓋骨や脛骨にひびが入ることで、膝に痛みを覚えます。患部を指で押すと強い痛みがあり、軽い腫れが見られることもあります。
普段運動しない方が、運動後に鈍い痛みを感じ続けるようなら、病院を受診してください。治療は安静が基本で、骨が完全に折れていない段階でしっかり休むことができれば、自然に治ることが多いです。
鵞足炎
鵞足(がそく)とは、膝の内側の少し下、脛骨の内側上部にある部分のことです。鵞足炎はこの部分にある滑液包(かつえきほう)や腱が炎症を起こした状態で、膝の内側に痛みを生じます。原因として多いのは、膝の曲げ伸ばしやひねり動作の繰り返しによる過度な摩擦です。膝の内側のやや下方を押すと痛むことが多く、炎症が強いときはその部分が腫れたり熱を持ったりすることもあります。
症状が軽ければ安静にしていると自然に治ることも多いですが、痛みが続く場合は病院に行きましょう。
腸脛靭帯炎
腸脛靭帯(ちょうけいじんたい)は、大腿骨(太ももの骨)の外側から脛骨の外側上部にかけて走る長い靭帯です。ランニングなどで膝の屈伸を繰り返すうちに腸脛靭帯と骨が摩擦を起こし、炎症が起きることで痛みを覚えます。ランナー膝ともいわれています。O脚の方にみられる傾向があります。運動をしばらく休めば改善することが多いですが、無理に走り続けると悪化して慢性化するため、「膝の外側が痛い」と感じたら早めに休養を取りましょう。
膝蓋腱炎
膝蓋腱(しつがいけん)とは、膝のお皿(膝蓋骨)と脛骨を結ぶ太い腱で、膝を伸ばす力を伝える役割を持っています。ジャンプの着地やダッシュの反復で膝蓋腱の繊維が傷つくと、炎症が生じて痛みを覚えます。ジャンパー膝ともいわれています。また中高年になってくると、急な坂道の上り下りなどでも生じることがあります。
膝の前面、ちょうどお皿の下の部分にジーンとした痛みが出たり、押すと痛みが生じたりします。通常、適度に身体を休め、アイシングすることで数日から数週間で改善します。再発しやすいので、繰り返す場合は受診を検討してください。
その他疾患や腫瘍が原因のとき
膝の痛みは、膝関節そのものの問題以外にも原因が潜んでいる場合があります。
ベーカー嚢腫
ベーカー嚢腫は、膝の裏(膝窩部)に発生する袋状の腫れです。滑液包という袋に関節液(滑液)が溜まり、こぶのように膨らんだ状態になります。変形性膝関節症や関節リウマチなど、膝関節に慢性的な炎症がある人に起こることが多いです。膝裏にコブができているのを見つけたら、早めに整形外科を受診して原因を調べてもらいましょう。痛みが強い場合や膝の曲げ伸ばしに支障がある場合は、病院で嚢腫の中の液を注射器で抜いて減圧する処置を行います。
痛風
痛風は、血液中の尿酸濃度が高くなることで関節内に尿酸塩の結晶が沈着し、激しい関節炎を引き起こす病気です。足の親指の付け根に生じる「痛風発作」が有名ですが、膝関節も痛風の好発部位の一つです。ある日突然、何の前触れもなく膝が腫れ上がり、熱を帯びて激烈な痛みに襲われます。痛風の発作は、多くの場合数日から1週間程度で自然に治まりますが、何度も繰り返すのが特徴です。
痛風は女性より男性に多く、特に30~50代の男性に好発します。痛風の症状を覚えたら、痛みが治まっても油断せず、病院で尿酸値管理の治療を受けましょう。食事療法や尿酸を下げる薬で治療を受けます。
関節リウマチ
関節リウマチは、自己免疫の異常により関節に慢性的な炎症が生じる病気です。免疫細胞が自分の関節を攻撃してしまうことで、関節の滑膜が腫れて痛みを引き起こします。関節リウマチは30~50代の女性に多く発症します。原因はまだ明らかになっていませんが、遺伝、ウイルス感染、喫煙など環境要因が引き金となり発症すると考えられています。
膝だけでなく複数の関節に痛みや腫れが現れ、強いだるさや微熱を伴うこともあります。かつては不治の病というイメージもありましたが、近年は抗リウマチ薬や生物学的製剤など治療法の進歩で寛解(症状が出ない状態)を目指せる時代になっていますので、早めに病院を受診しましょう。
急に膝が痛いと感じたときの対処法と応急処置
急に片足の膝に激痛が走り、歩けないほどの痛みを感じたら、無理に動かそうとせずに座ったり横になったりして、患部を安静に保ってください。熱を持ったり腫れたりしている場合は、膝に氷や冷たいタオルを当てて15〜20分程度冷やし、心臓より高い位置に挙げておきましょう。
病院に行くほどでない場合も、同じく安静に過ごしたほうがよいでしょう。激しい運動や膝に負担のかかる動きは、数日~1週間ほど避けてください。
明らかな炎症や外傷があるときは、ストレッチやマッサージを行うと炎症を悪化させる恐れがあります。痛みや炎症がある間は、安静を第一としてください。ケガの疑いがある場合など、次に説明するような状況に当てはまる場合は、できるだけ早めに整形外科を受診して治療を受けてください。
急に膝が痛んだときは病院へ行くべき?受診の目安
痛みの感じ方や症状の現れ方には個人差があります。下記目安はあくまでも一般的な例であるため、少しでも不安を覚えるとき、違和感があるときは迷わず受診してください。
受診すべきケース
膝の痛みが強い場合は迷わず受診しましょう。とくに、膝が大きく腫れて熱を持っている場合や、激痛で片足に体重をかけられず、歩行が困難な場合は要注意です。靭帯や半月板、骨などに損傷を負っている可能性が高いため、早急に整形外科で検査を受けてください。
また急な痛みが引いた後も、慢性的に膝が痛む場合。安静にしているときは痛まないのに、立ち上がったり歩いたりすると痛みが出る場合も注意が必要です。変形性膝関節症、半月板損傷など の疾患が潜んでいる可能性があり、放置すれば関節の変形や症状の悪化につながるため、早めに医療機関を受診し、適切な治療を受けることが大切です。
様子を見てもよいケース
膝の痛みが軽く腫れや熱感もなく、普段どおり歩ける場合は、しばらく自宅で様子を見てもよいでしょう。
まずは数日間、無理をせず膝を休めて痛みが改善するか確認します。思い当たるケガや原因がないのに「急に膝が痛くなった」という場合でも、安静にしたり冷やしたりすることで症状が和らぐことがあります。痛みが治まり、日常生活に支障がなければ、慌てて病院に行く必要はありません。しかし、数日経っても痛みが引かない場合は早めに整形外科を受診してください。
急なひざの痛みが不安な場合は迷わず病院を受診しよう
急に膝の痛みを感じた場合、多くは整形外科で対処可能です。日常生活に影響が出ない場合は安静にすることで快方に向かうこともありますが、痛みで歩けなかったり、他の症状を伴ったりする場合は速やかに病院を受診しましょう。
田園調布長田整形外科では、ライフスタイルに応じた適切な治療をご提供できるよう、さまざまな治療方法をご用意しております。突発的な膝の痛みに悩む、大田区・世田谷区エリアにお住まいの方は、田園調布長田整形外科までまずはご相談ください。