ドクターコラム

肩関節の痛みの原因と治療法

肩関節は、人体の中で最も動きが大きい関節です。 動きが大きいということは、関節をささえている筋肉、腱、靭帯などに負担がかかり、少しでもバランスが崩れると傷めやすいとも言えます。そして肩関節は、上半身のみならず全身の筋膜バランスの影響を受けやすい関節です。筋膜バランスが崩れた状態で繰り返し行われている運動や持続的な不良姿勢により、関節機能の不調和が生じてきます。この筋膜バランスに関与するのが自律神経系です。

当院では、筋膜バランスを整えるために、自律神経測定や舌診などの東洋医学的アプローチから氣・血・水の状態を確認すること、更には運動・睡眠・食事など自分自身の生活習慣を理解してもらうことを行っています。
長引く肩関節痛や、何もしないのに痛む安静時痛などの場合は、肩腱板損傷や関節唇損傷などや、更には心肺機能の異常からの症状の可能性もあるため、レントゲン検査だけでなく、MRI検査、時には血液検査・心電図検査などを行い診断します。

※当院のMRIはオープン型ですので、閉所恐怖症の方への検査実績もあります。

■考えられる原因

肩関節周囲炎(五十肩)

「四十肩・五十肩」は俗称で、医学的には「肩関節周囲炎」といい、肩関節まわりの筋肉や靭帯が炎症を起こす症状を指します。五十肩というのは、50歳前後に多くみられる、肩に痛みが出て動かなくなる症状です。実際、1〜2年もすれば自然と治ることが多いです。しかし中には、医療機関にかかり五十肩と診断されたので、自然に治ると自己判断して通院せずにいたら、数ヶ月経っても症状は改善せずに関節の動きがさらに悪くなって来院する方がいます。これは五十肩の大部分が生活習慣、自律神経のアンバランスが関与しているからだと考えています。 

●症状
多くの場合が原因がなく痛みが生じ、数週間から数カ月かけて悪化していきます。悪化するにつれ、肩を動かすと きにピリッと刺すような痛みが走り、腕を上げたり背中に回す動作ができなくなるため、日常生活に不便を感じるようになります。ピーク時には「夜間痛」といって、夜眠れないほどの激痛になることもあります。痛みの範囲も、肩全体から腕までと広範囲に及びます。

●治療法
痛みが強い時期には消炎鎮痛剤の内服、注射療法を行います。同時にリハビリテーションを行います。具体的には呼吸法指導、全身の筋膜バランスを整えるストレッチなどを指導します。
更に当院では、自律神経測定(下記写真1-1)を行い、サウンドヒーリング(下記写真1-2)、ビジョントレーニング(下記写真1-3)、アロマセラピー、指ヨガなど、聴覚・視覚・嗅覚・触覚などの感覚入力による “脳波の調整(ブレイン・コンディショニング)“を提案して、自律神経バランスを整えることから身体機能の修正を行います。既に慢性的な痛みとなっている場合には、ニューロフィードバック(下記写真1-4)により脳波調整を行い疼痛コントロールを促すオリジナルメソッドも提案しています。

写真1-1:自律神経測定機器(マインドビュアー)
写真1-2:サウンドヒーリング(体感音響システム・自然音療法)
写真1-3:ビジョントレーニング専用機器(V-training2G)
写真1-4:ニューロフィードバック脳波調整システム (アルファスイッチ)

石灰沈着性腱板炎

肩関節の主要な筋肉である腱板の周囲に石灰物が沈着することで、滑液包などに炎症を起こし、肩の動きを伴う動作時に痛みが生じます。40~50歳代女性に多く、原因は不明で石灰が沈着する理由は分かっていません。

●症状
突然誘因なく激痛が走り、動かさなくても痛みが強く、腕を動かすことができないのが特徴です。

●診断
レントゲン撮影で石灰を確認します。

●治療法
激痛で来院される場合が多いため、まずは肩関節の炎症を抑えるために、注療法(ステロイド剤+局所麻酔剤)、投薬では消炎鎮痛剤を投与します。疼痛コントロールができた段階になった後、肩の動きが悪くなった場合には筋肉の緊張をとる目的でリハビリテーションを行います。保存治療に効果がなく、肩の引っかかり感やある角度での痛みがとれない場合には、鏡視下石灰摘出術を行うことがあります。

③上腕二頭筋長頭腱炎

上腕二頭筋腱鞘炎は、種々の要因によって結節間溝部で上腕二頭筋長頭腱の滑動機構の破綻が生じて起きる腱鞘炎です。

●診断
単純レントゲン検査では多くは異常を認めません。 MRI検査ではT2強調画像で結節間溝物質の腱周囲に滲出液の貯留を表す高信号域を認めます。

●治療法
ほとんどが局所の安静と消炎鎮痛薬の投与、腱鞘炎内ステロイド注射などの保存的治療で軽快します。

腱板断裂・損傷

腱板は、肩関節を安定させ動かすために重要なものなので、損傷や断裂によって、引っかかりなど、肩の動きに支障が出たり、痛みが生じることがあります。肩腱板断裂は、特に腱の老化が始まる40歳以上の男性、発症年齢のピークは60代です。  肩腱板断裂の原因は「急性断裂」「変性断裂」の二つに分かれます。

[急性断裂]
転んだり、重いものを持ち上げたときなど、外傷によって一気に断裂が起こる場合。

[変性断裂]
スポーツなどで肩の使いすぎによる腱板のすり減りや、年齢を重ねるにつれて起きる腱板の老化によって断裂が生じる場合。

●症状
運動痛そして夜間痛を訴える場合もあります。変性断裂の場合は多くの患者さんは肩の挙上は可能ですが、挙上するときに力が入らない、挙上するときに肩の前上面でジョリジョリという軋轢音がするという訴えもあります。重症になりますと疼痛や筋力低下により腕が挙がらなくなります。

●診断
レントゲン検査だけでは診断できませんが、MRI検査や超音波検査で診断することができます。
肩腱板断裂の患者さんでも五十肩と診断されていることがあります。五十肩では1年以上痛みが続くことはまずありませんので、このような場合は肩腱板断裂が疑われます。

●治療法
急性外傷で始まった時には、三角巾で1~2週安静にします。

[保存療法]
薬物療法として消炎鎮痛剤の投与と注射療法、そしてリハビリテーションによる運動療法が行なわれます。腱板のすべてが断裂することは少ないので、残っている腱板の機能を賦活させる腱板機能訓練は有効です。

[手術療法]
保存療法で肩関節痛と運動障害が治らないときは手術を行ないます。手術には、関節鏡視下手術と直視下手術があります。

⑤変形性肩関節症

肩の上腕骨や関節窩の軟骨がすりへる病気です。

●症状
・痛くて自分で肩が挙がらない
・肩を動かすとごりごりと音がする
・他動運動(他の人にうごかしてもらい肩をうごかす)でも肩が十分に挙がらない などが典型的な症状になります。

●診断
レントゲン検査、更なる評価はCT検査で詳細に分かります。

●治療法
保存療法として、薬物療法(消炎鎮痛剤投与・注射療法)、そしてリハビリテーションによる運動療法は、病状が進行した変形性肩関節症では機能の維持と日常生活訓練などを行います。手術療法としては、鏡視下滑膜切除術、人工関節置換術があります。人工関節置換術は、痛みを和らげ日常活動を再開するのに役立つ安全で効果的な治療法です。上腕骨頭部、または関節窩の両方の交換する場合と上腕骨頭のみ交換する場合があります。

⑥肩関節脱臼

スポーツや転倒などの外傷で肩に強い力が加わって上腕骨(腕の骨)が本来の位置からはずれてしまった状態のことです。 一度脱臼すると脱臼しやすくなり、それほど強い力が加わらなくてもはずれたり、服を着替える動作や寝ているうちにでもはずれたりするようになります(反復性脱臼)。

●症状
脱臼すると激しい痛みがあります。腕は動かせません。脱臼が整復されて数日間は重い痛みや違和感などは残りますが、少しずつ和らいでいきます。その後の生活のなかでは通常の動作ではあまり問題にはなりません。  脱臼を繰り返すと服を着替える動作や寝ているうちにでもはずれるようになりますし、違和感を覚えるようになります。また、スポーツなどで肩に力が加わったり腕がもっていかれたりすると恐怖感がでたり、肩を動かすとはずれそうな不安感が生じます。

●診断
脱臼はレントゲン検査で確認します。(写真⑨ レントゲン検査)後方脱臼など判断が難しい場合にはCT検査を行います。反復性の場合や初回脱臼でしばらく経過の経っている場合には、実際に脱臼しそう な姿勢をとってはずれそうな感覚があるのかを確認します。検査としてはMRI検査で診断します。骨折などを合併している場合にはCT検査を追加します。

●治療方法
脱臼して来院された場合には、徒手整復します。その後、三角巾で固定します。リハビリテーションで周囲の筋肉を鍛えて脱臼しにくくするなどと言われますが、残念ながらはずれない肩にはなりません。損傷した関節唇や関節上腕靱帯は手術以外の方法では治せないのです。あまり肩を使わない方のなかには手術を行わないこともありますが、完治をお望みであれば手術を行う必要があります。

●手術治療
肩を大きく切開いて行う方法(直視下手術)と、最近行われるようになってきた関節鏡を用いる方法(関節鏡下手術)とがあります。手術後は約1-3週、三角巾で固定します。術後早くからデスクワークなどの就労は可能です。約3ヵ月で軽いスポーツ、6ヵ月でほとんどのスポーツ種目で復帰が可能となります

田園調布 長田整形外科
院長 長田 夏哉(おさだ なつや)

【診療科目】
整形外科・リハビリテーション科・一般内科・自然療法・KITAサウンドヒーリング・ウェルネスプログラム

【略歴】
平成5年に日本医科大学卒業後、慶應義塾大学整形外科学教室に入局し整形外科専門医の研鑽を積む。平成17年に川崎市立川崎病院の医長に就任。平成17年9月に田園調布 長田整形外科を開院。

【資格】
日本整形外科学会 専門医
日本整形外科学会認定 スポーツ医
日本スポーツ協会公認 スポーツドクター

【所属学会】
日本整形外科学会
日本整形外科スポーツ学会
日本臨床スポーツ医学会
日本手の外科学会
日本運動器科学会
日本骨粗鬆症学会 等

【所属・関連協会】
一般社団法人 日本スポーツビジョン協会:JSVA 理事長
一般社団法人 国政生命意識協会 顧問
一般社団法人 MCA学会 理事
一般社団法人 手のひらセルフケア協会
サウンドヒーリング協会 アドバイザリーブレイン
NPO法人 予防医学療法研究会 顧問
認定NPO法人 日本YOGA連盟 アドバイザー

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