ドクターコラム

膝のリハビリってセルフでできる?リハビリ方法や注意点【大田区・世田谷区の整形外科医が解説】

膝の痛みでお困りの場合、セルフでリハビリ運動をすることは可能ですが、人によって痛みの原因が異なるため、病院で診断を受けることも大切です。病院での治療と、自宅でのリハビリ運動を組み合わせることで、膝の痛みの軽減にもつながります。本記事では、自宅でできる膝のリハビリ方法や、安全に行うための注意点について、整形外科医が詳しく解説します。

変形性膝関節症のリハビリはセルフケアとの組み合わせ!

膝の痛みの原因として最も多い変形性膝関節症は、膝関節の軟骨がすり減ることで痛みや動きにくさ、腫れなどが生じる疾患です。加齢とともに進行しやすく、立ち上がるときや階段の昇り降りで痛みを感じるケースが多いでしょう。

リハビリでは、膝周りだけでなく体幹や股関節、太ももやふくらはぎなど脚全体の筋力を鍛えたりほぐしたりする必要があります。膝周りの筋肉を鍛えることで、膝への負担を分散させ、関節を安定させることができるのです。

病院での専門的な指導や薬物療法などと、自宅でのセルフケアを組み合わせながらリハビリすることになります。

保存療法としてのリハビリと手術後のリハビリの違い

保存療法とは、手術を行わずに症状や関節機能の改善を目指す治療です。リハビリによって膝関節への負担を減らし、痛みを軽減することが目的となります。運動の強度は徐々に上げ、無理のない範囲で継続することが大切です。

一方、変形性膝関節症の症状が進むと、保存療法ではなく手術が必要となることもあります。手術後のリハビリは、手術で治療した膝の機能を引き出すことが目的です。手術直後は関節の可動域を広げることから始まり、段階的に筋力トレーニングへと移行します。
いずれも医師の指示に従い、計画的にリハビリを進める必要があります。

クリニックと自宅のリハビリの違い

クリニックでのリハビリには、運動療法と物理療法があります。運動療法では、理学療法士の指導を受けながら、正しい動作で身体を動かします。
物理療法では、温熱療法や冷却療法、電気刺激治療などの医療機器を使用して、痛みの緩和や血行改善を行います。

自宅でのリハビリは、クリニックで習った運動を日常的に実践することが中心です。リハビリは日々の取り組みが最も重要なのです。
しかし、膝の痛みの原因は人によって異なるので、まずはクリニックで診断を受けてください。症状に合わせた運動や、正しいフォームで行わないと効果が得られないだけでなく、症状を悪化させる可能性もあるため、指示通りにリハビリするようにしましょう。

自宅・セルフでできる膝のリハビリ運動【実践編】

膝のリハビリは、正しい方法で行えば自宅でも可能です。ここからは、変形性膝関節症の方が安全に配慮して実施しやすい具体的な運動方法を紹介します。無理のない範囲から始めて、徐々に回数や強度を上げていきましょう。

浅めのスクワットで自重トレーニング

浅めのスクワットは、膝への負担を抑えながら太ももの筋肉を鍛える効果的な運動です。

  1. 肩幅程度に足を開いて立ち、つま先はやや外側に向ける
  2. 背筋を伸ばしたまま、ゆっくりと膝を曲げていく
  3. 深く曲げすぎず、膝が45度程度曲がったところで止める
  4. ゆっくりと元の姿勢に戻る

最初は10回を1セットとし、1日2〜3セット行います。膝に痛みを感じない範囲で行い、慣れてきたら回数を増やしていきましょう。椅子の背もたれや壁に手をついて行うと、バランスが取りやすく安全です。呼吸を止めずに、下がるときに息を吸い、上がるときに息を吐くようにしましょう。

膝の柔軟性を高めるストレッチと体操

太ももやふくらはぎの柔軟性を高めると、膝を動かしやすくなり、歩きやすさにつながります。筋肉が硬いと膝の動きが制限され、関節に無理な力がかかりやすくなるため、痛みも感じやすいです。毎日のストレッチで筋肉の柔軟性を保つようにしましょう。

ストレッチの種類手順回数・時間の目安
前太もものストレッチ壁に手をつき、片足の膝を曲げて足首を持ち、お尻に近づける。太ももの前側が伸びるのを感じながらキープ左右各3回・20秒
ふくらはぎのストレッチ壁に両手をつき、片足を後ろに引いてかかとを床につける。ふくらはぎが伸びるのを感じながらキープ左右各3回・20秒
椅子に座り、膝を伸ばした状態で膝の皿を両手で優しく上下左右に動かす各方向10回ずつ

ストレッチは痛みを感じない範囲で行い、呼吸を止めずにリラックスして実施することが大切です。

膝に優しい有酸素運動

有酸素運動は全身の血流を改善し、体重管理にも効果的です。膝への負担が少ない運動を選ぶと無理なくリハビリできます。

水中ウォーキング・水泳によるリハビリ運動

水中では浮力により体重が軽くなるため、膝への負担が大幅に軽減されます。水中ウォーキングなら、プールの中を普通に歩くだけでも十分な運動量になります。水深は胸くらいまでが理想的で、前向き、後ろ向き、横向きなど様々な方向に歩き、バランスよく筋肉を鍛えましょう。

水温は体が冷えすぎない程度(30度前後)が適切です。最初は15分程度から始め、慣れてきたら30分程度まで延ばしていきましょう。

水泳の場合は、平泳ぎよりもクロールや背泳ぎの方が膝への負担が少ないです。週2〜3回程度の頻度を目安としてください。

サイクリングによるリハビリ運動

自転車運動は座っているため、膝への衝撃を抑えながら、太ももの筋肉を効率的に鍛えることができます。室内用のエアロバイクを使用すると、天候に左右されないため継続しやすいでしょう。サドルの高さは、ペダルが一番下にきたときに「膝が軽く曲がる程度」に調整します。

最初は軽い負荷で10分程度から始め、徐々に時間を延ばしていきます。ペダルをこぐ速さはゆっくりと一定のリズムを保ち、膝に痛みを感じたら負荷を下げるか、休憩を取りましょう。屋外でサイクリングする場合は、平坦な道を選び、急な坂道は避けてください。週3〜4回、20〜30分程度を目標に行いましょう。

安全にリハビリするためのポイント

リハビリは継続することで効果が現れますが、無理は禁物です。安全に効果的なリハビリを行うための重要なポイントを押さえておきましょう。

痛みが強いときは無理をしない

運動中や運動後に強い痛みを感じたら、すぐに運動を中止してください。痛みがある場合は、患部を冷やして安静にすることが大切です。アイスパックや保冷剤をタオルで包み、15〜20分程度冷やします。直接肌に当てると凍傷の恐れがあるため注意しましょう。

通常、軽い筋肉痛であれば2〜3日で改善しますが、3日以上痛みが続く場合や、膝に熱感や腫れがある場合は、炎症が起きている可能性があります。このような症状がある場合は、自己判断せずに必ず整形外科を受診してください。早めに対処することが症状の悪化を防ぎ、回復を早めることにつながります。

症状に合わせて頻度や強度を調整する

リハビリの頻度や強度は、個人の症状や体力によって異なります。一般的な目安として、筋力トレーニングは週3回程度、ストレッチは毎日行うことが推奨されますが、これはあくまで目安であり、自分の体調に合わせて調整することが重要です。

運動の強度は、「少しきついかな」と感じる程度が適切です。楽すぎると効果が得られませんが、きつすぎると膝に負担がかかります。不安な場合は、医師や理学療法士に相談してみてください。


膝のリハビリ中に注意したい日常生活の工夫リスト

日々のリハビリを頑張っていても、膝に過度な負担を与える生活を続けていると痛みは治まりにくいです。日常生活での膝への負担を減らすように気を付けて過ごしてみてください。以下の工夫を取り入れることで、膝の痛みを軽減しやすくなります。

  • 階段の昇り降りは手すりを使い、一段ずつゆっくりと行う
  • 歩くときは膝を伸ばしきらず、少し曲げた状態を保つ
  • 椅子から立ち上がるときは、両手で支えながらゆっくりと立つ
  • クッション性のある靴を選び、かかとが高い靴は避ける
  • 健康的な体重を維持し、膝への負担を軽減する
  • 玄関やトイレ、浴室などに手すりを設置して体重を分散させたり、段差を減らしたりして工夫をする

階段を昇るときは痛くない方の足から上がり、降りるときは痛い方の足から降りるのがポイントです。

一見、膝と体重は関連がないように思えるかもしれませんが、実は、体重が1kg増えると膝への負担が3〜4kg増えるといわれています。食事管理と適度な運動で適正体重を保つことが大切です。

膝のリハビリでお悩みの方は田園調布長田整形外科へ

膝のリハビリは、正しい方法で継続することが何より大切です。自宅での継続的なセルフケアも重要ですが、専門家の定期的なチェックを受けることで、より安全で効果的なリハビリが可能になります。

田園調布長田整形外科では、経験豊富な医師と理学療法士、そしてスポーツナース・スポーツトレーナーがチームとなって、患者様一人ひとりの症状に合わせたリハビリプログラムを提供しています。膝の痛みでお悩みの方は、まずは一度ご相談ください。

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