ドクターコラム

【フクロウ体質】 朝が苦手な方に、漢方薬の選択肢を

こんにちは。昨年4月からこちらで月2回(第1,第3火曜日午前)漢方外来を担当している吉住奈緒子と申します。

最近朝晩がめっきり寒くなりました。この季節、朝は暖かい布団から出たくなくてついつい寝坊してしまうという方も多いのではないでしょうか。中には、冬だけでなく一年中朝が弱くて起きられないという方もいらっしゃるかと思います。いわゆる「朝寝の宵っ張り」で「フクロウ型体質」と呼ばれる状態です。今回はこの「フクロウ型体質」について、そしてその改善に役立つ漢方薬についてお話ししたいと思います。

「フクロウ型体質」とは、朝起きにくい、起きても頭がはっきりしない、体がだるい、朝は食欲がない、午前中は頭が働かずミスばかりしてしまう、ところが夜は元気で眠れない、という状態を指します。さらに、年がら年中、体がしんどい、疲れやすい、頭が痛む、肩がこる、胃が重苦しい、めまいがする、手足が冷えるなどの症状があり、ご本人は辛い思いをしている一方で、採血などの検査所見では大した異常が見つからないため、治療ができず周囲の理解も得られなくて困っているといったケースもみられます。

また、小学生や中学生でもこういう症状をお持ちのお子さんは多く、毎日学校に遅刻してしまう、登校しても頭がぼーっとして授業を聞いていられない、保健室登校になる、登校拒否と間違われるといったことも少なくありません。親御さんとしては「なぜうちの子だけこんなに朝が苦手なのだろう」と心配されることもあるでしょう。

こうした「フクロウ型体質」の方は、自律神経失調症、起立性低血圧、女性でしたら血の道症や更年期障害、更に神経症やうつ病などといった診断をされていることもあります。

西洋医学的な治療でよくなる場合ももちろんありますが、漢方医学では、このような状態の方に水の代謝を良くする漢方薬を処方することで、劇的に改善する場合があります

特に以下の2つの漢方薬がフクロウ型体質には効果的とされています。

1.苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)

苓桂朮甘湯は、水分代謝を改善する作用があります。この薬は、主に上半身に過剰にたまった余分な水分を取り除き、頭が重かったり、胸がドキドキしたりといった症状を改善します。また、めまいやふらつきなど、水分代謝の乱れからくる症状にも使われます。フクロウ型体質の方に最もよく使う処方です。

2. 五苓散(ごれいさん)

五苓散もまた、水分代謝を整える漢方薬です。特に胃腸の調子を整える効果があり、朝に食欲がないお子さんや、体がむくみやすいお子さんに適しています。この薬は体内にたまった余分な水分を排出し、身体全体を軽くする働きがあります。

お子さんがフクロウ型体質の場合、親御さんは「うちの子はどうして朝起きられないんだろう」と不安になったり、「もっと気合を入れて頑張ってほしい」と思ったりすることもあるかもしれません。しかし、この状態は単なる怠けや気合不足ではなく、体質や生活リズムによるものです。漢方薬という選択肢を活用することで、お子さんの体調を根本から整え、毎朝元気に学校へ通えるようサポートすることができます。

もし「うちの子は/自分はフクロウ型体質かもしれない」と感じたら、お気軽に漢方外来にご相談ください。フクロウ型体質の場合も、そうではなかった場合も、お一人お一人の体質に合わせて、適切な漢方薬を処方させていただきます。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

吉住奈緒子先生
東京女子医科大学附属東洋医学研究所 助教
2003年大阪大学医学部卒業。同大学附属病院・大阪府立急性期総合医療センター産婦人科研修を経て厚生労働省入省。女性の健康、老人保健、環境保健等の施策に携わる。社会医学系専門医・指導医。厚生労働省退職後、東京女子医科大学附属東洋医学研究所で漢方診療科勤務。西洋医学・東洋医学の枠にとらわれず、一人一人が心身共に健やかに生きることをサポートする診療を心掛けている。

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